水干姿の少年が歩いている。
何故自分はここにいるんだろう。
体が衰弱しているのが自分でもわかる。全身が痛い。
「何か」に出会う為…。だが、その何かがわからない。「何か」の為に、命をかけて、ここにいる。それなのに、肝心な「何か」が思い出せない。
寒くて、凍えそうで、心細い。
「逢いたい。」
その気持ちだけが、傷ついた体を前進させる。
赤い、鳥居が見えた。
力尽きて、倒れる。とても寒くて、消えてしまいそうな意識の中、何かが自分を呼んでいるような気がした。
意識が戻ると、そこは見知らぬ天井で、やわらかな布団と、手当てされた自分自身の体があった。
ここは、どこだろう。自分は、誰なんだろう。
遠くで、少女が自分を呼んでいる。が、表情がわからない。
少年は再び意識を失った。
何のために。誰のために。
確かに覚えていたはずなのに、そっくりどこかに置き忘れてきたように、思い出せない。そんな感情があったことさえもがおぼろになるほど、月日は、黙って過ぎていった。