■逢魔の刻said

 志摩子を送り届け、ハクが家に戻ると、ディスプレイに映し出された小窓にえんえんと続く言葉。

「どうしたの?」

「おーーい」

「あれ?」

 そうだった、千尋に何も言わずに出て行ってしまった。そう思って、タスクトレイをクリックすると、千尋のニックネームはオフラインになっていた。

 あわてて携帯電話を取り出し、電話をかける。

 数度の呼び出しの後…。

「もしもし?」

「ああ、千尋?」

「…」

 しばしの沈黙に、ハクが戸惑う。

「千尋?」

「…女の人と、一緒だった…って、ハクが」

 あいつか…、心の底からハクは思った。いったい千尋に何を吹き込んだのか、考えただけでおそろしい。

「いや、あいつから何を聞いたか知らないけど、あれは…」

 プツッ…ツー、ツー、ツー、ツー…。

 しばし、呆然とする、とにかく、誤解を解かないと。ハクはディスプレイに向き直ると、テキストエディタを立ち上げ、メールを書き始めた…。


NEXT>>
TOP>>

壁紙提供:深紅の月夜様