うきうきと千尋を抱かかえて、ハクが歩いていく。
「ハク…道が違うわ」
「いいんだ、千尋は今日から私の部屋に来るんだ。相部屋では行き届かない事もあろう、湯婆々様には、きちんと後から報告するから」
その時だった、物陰から五人の童子が踊り出た。
「待たれよ!」
「それなる娘をこちらへ!」
ちんまりした童子五人が、無理矢理容貌をごまかそうと、顔に布を巻いている…が、衣装からして正体は明らかなのだが…。
「…お客様、これはいったいいかなる趣向で?」
あきれたようにハクが答えた。
「我らは客などではない!」
「そうじゃ!名も無き盗賊じゃっ!」
わーーーっ、と一斉に飛び掛ったが、ハクの足元をちょろちょろとまとわりつくばかり。ぽかすか殴りつけてはいるが、あまり効果はないようだった。しばし、五人囃子の自由にまかせていると…。
「…おのれ、こやつ、なかなかできるぞ」
「ううむ、ではとっておきを出すしかないか」
…絶句して、ハクはいったん抱いていた千尋を降ろした。
「いい加減になさって下さい!」
右手に二人、左手に二人掴んでひょいと持ち上げる。
「ななっ!こやつ、何をする!」
「降ろせ!降ろさぬか!!」
「用件がおありなら承ります、ですから、その妙な布をおとり下さい」
先ほど父親になる事が決定した若い竜が深々と溜息をついた
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