もしも永遠と呼べるものがあったなら…。

琥珀川の記憶


 そして、現代、かつて琥珀川のあったそこに、一人の男が立っていた。廃墟になったマンションの門にかかったプレートには、”リバーサイドマンション”とある。失われた川の名を冠したそのマンションは、立地の悪さと地盤の不安定さから、元々入居者が少なかったところへ、相次ぐ地震、災害の煽りと、建築資材の不備により、もう何年も借り手がつかないまま放置されていた。ついには持ち主だった企業も倒産してしまい、債権者に渡ったが、何の手も加えられないまま、そのままそこに放置されていた。

 長身の男の、長い亜麻色の髪と、黒いロングコートの裾がたなびく。門を過ぎ、割れた自動ドアを抜け、中央の吹き抜けにやって来ると、跪き、地面に手をあてた。かすかなぬくもりを感じると、口角を吊り上げ、笑った。

 そして、誰とも無くつぶやく。

「どこへ行った、…あいつは」

 ひときわ大きく突風が生じ、黒く長く翻る。

「忘れるな…私を」



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