空は青く澄み、風が草原を揺らしている。三様の出でてたちは、赤と青と白。ハクは一度油屋を見、深く頭を下げ、踵を返した。
「では、公子」
「我らと共に」
ひざまずいた蒼仁と朱礼に冷水を浴びせるがごときハクの言葉が降りかかる。
「海底神殿よりまず立ち寄るところがあります」
「は?! ……そっ、それは……」
驚いて蒼仁の声が裏返った。
「果たさなくてはならない約束がある、と言ったでしょう? そして、あなた方お二人は忠誠を誓われた、『この私自身に』違いますか?」
にっこりと笑うハクに、朱礼ははやくもやられたな……、とため息をつき、蒼仁はまぬけにもあんぐりと口をあけている。
「やれやれ、食えない公子様だ」
居住いを正して朱礼は立ち上がり、うなだれる蒼仁の肩を叩いた。
「呆けている場合ではないぞ、蒼仁、公子のお召しだ、従うよりあるまい」
「やはりあなたは理解が早い、……今後もそのようにお願いしたいものですね」
やはりハクと朱礼のやりとりには何かが含まれている。
「では、参りましょうか」
青い空に、白い竜と、紅い竜、ややあって、蒼い竜が舞い上がった。三体の竜は空へ消え、無人の草原だけが残った……。