逢魔の刻〜神隠し〜(1)

 水干姿の少年が歩いている。

 何故自分はここにいるんだろう。

 体が衰弱しているのが自分でもわかる。全身が痛い。

「何か」に出会う為…。だが、その何かがわからない。「何か」の為に、命をかけて、ここにいる。それなのに、肝心な「何か」が思い出せない。

 寒くて、凍えそうで、心細い。

「逢いたい。」

 その気持ちだけが、傷ついた体を前進させる。

 赤い、鳥居が見えた。

 力尽きて、倒れる。とても寒くて、消えてしまいそうな意識の中、何かが自分を呼んでいるような気がした。
 意識が戻ると、そこは見知らぬ天井で、やわらかな布団と、手当てされた自分自身の体があった。

 ここは、どこだろう。自分は、誰なんだろう。

 遠くで、少女が自分を呼んでいる。が、表情がわからない。

 少年は再び意識を失った。

 何のために。誰のために。

 確かに覚えていたはずなのに、そっくりどこかに置き忘れてきたように、思い出せない。そんな感情があったことさえもがおぼろになるほど、月日は、黙って過ぎていった。

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