BlueFrogPrince -あるいは青蛙の憂鬱-

■そして王子は途方に暮れる

金色の巻き毛を雨に濡らしながら、強くなる雨脚をものともせずに、王子然とした青蛙は途方に暮れて、油屋を仰ぎ見た。

ふと、窓を拭いていたリンと視線が交差する。

『呪いを解くには……』

銭婆の声が脳裏をよぎる。
リンの、やわらかそうな唇だけがいやにハッキリと見えた。

呪いを解くために……、そう言ったら、リンは協力してくれるだろうか。
そんな風に思ったりもする。
リンは他の湯女とは違うところがある。
見目良い男神が来ても、他の湯女のように浮き足立ったりする事は無い。正直に事情を話したら、もしかしたら嫌がらずに協力してくれるかもしれない。
けれど、安易に力や美しさを望んでしまった自分を知られる事が、なんだかイヤだった。

音をたてて、水煙がリンの姿をも隠してしまいそうになる。

雨に濡れた青蛙は、泣いているようでもあった。

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